取扱説明書を渡されたカンダタの話。

また、抽象的に書くつもりなんですが、抽象的且つ具体的になるのが私です。
一体何が起こっているのかは、なんとなくご想像下さい。
断っておきますが、元気です！
元気だからこそ生じている悩みなので、ご安心下さいね。



蜘蛛の糸が、カンダタの頭上に降りてきました。
カンダタは、極楽浄土へ行けるかもしれないと、必死で蜘蛛の糸を掴みました。
掴んだ！掴んだぞ！！
ところが、その次の瞬間、カンダタはもうひとつのことに気付きました。
糸に、なにか紙がからまっているのです。
一体何が書いてあるんだ？

その紙には、こんなことが書いてありました。

・極楽浄土までの距離：果てしなく遠し
・糸の耐久重量：意外と弱し　
・極楽浄土で求められる姿勢：常に自分を高める努力をすべし　早寝早起きを徳とすべし
・極楽浄土での生活：素晴らしく楽し


カンダタは悩みました。
極楽は、遠いのか？
カンダタ自身体格がいいのに、後から他の罪人が何人も何十人もついてきたら、すぐぷつりと切れてしまうではないだろうか？
ということで、掴んだ糸と、紙を握りしめ、知恵人達に意見を乞うことにしました。
ひとりは蜘蛛の糸の強度に詳しい知恵人。
もうひとりはカンダタの強度に詳しい知恵人。

知恵人に相談したカンダタは、もしかしたらこの極楽浄土へは、自分は辿り着けないのではないかと思うようになりました。
深く、ため息をつきました。


そんなカンダタを見たお釈迦様は、極悪人のカンダタなのにも関わらず、なんだか哀れに思えてきました。
蜘蛛を助けただけで、いろんな悪事を働いた極悪人が、自分のあり方を模索している。
なりふり構わぬ姿で極楽を目指すのかと思ったら、どうやら何か躊躇のようなそぶりが見える。
その、迷っているカンダタを、お釈迦様は試してみよう、と思い立ちました。
蜘蛛の糸を３本寄り合わせて、もう一度地獄へと垂らしたのです。

ほんの少し太くなった蜘蛛の糸が、カンダタの頭上に降りてきました。
カンダタは驚きました。
悪さしかしなかった自分に、何故このようにお釈迦様は機会を与えてくださるのだろうか。
その、３本寄り合わさった糸にも、紙がくくりつけてありました。
カンダタは、細い糸を握ったまま、新しい糸の紙をそっと外し、中身を読んでみました。

・極楽浄土までの距離：もしかしたら前よりは近い可能性あり
・糸の耐久重量：最初の糸よりは３倍は強い
・極楽浄土で求められる姿勢：自分を労りつつ、今の己にできる範囲で努力をすべし
・極楽浄土での生活：真の意味で学びたいこととは少々ずれるが、沢山の収穫が得られるであろう


カンダタは、悩んでいます。
最初に掴んだ蜘蛛の糸を手から放し、新たに降りてきた糸を掴むか。
極悪人のカンダタでも、この諺は知っていました。

「二兎を追う者は一兎をも得ず」




芥川龍之介さんに怒られるかは、不明です。
お詫びにせめて、「羅生門」くらい読みこなさないとだめでしょうか。
国語の授業では怖い印象が残っただけで、真の意味はあんまりわからなかった、国語苦手人です。